明後日の素

二日後がもっと暮らしやすいように

鯖を探して

先週の土曜日は久々に魚を捌きたくなって、いても立ってもいられず魚屋を求めて街に飛び出した。

 

歩いて30分先のスーパーは生活協同組合の実店舗で、しかもその日は店先に『魚の日』ののぼりが立っていた。これは期待出来そう、と意気揚々と買い物かごを腕にかけて店に入った。

 

奥まで進むとずらりと魚介が並んでいる、真鯛、イトヨリダイ、カレイ、イカ、太刀魚…鯖…あった。ただ、ようやく見つけたそれは既に半身に切られていて、煮物用との表示がついている。…惜しい、そうじゃない…と思いながら渋い顔をしていると、店員のおばちゃんに『何か欲しいのあった?』と尋ねられ、曖昧な笑みを浮かべて店を後にした。

 

気を取り直して次の店、今度は個人の昔からある所で、旦那さんが捌いて、奥さんが接客というスタイルの魚屋さんだ。店からはみ出た発泡スチロールに張られた氷水の中には生ニシン、鯵、そして鯖。しかも今度はしめ鯖用、と段ボールを切って作った値札に書かれている、しかも300円。どれにしようかとよく見てみると、少し目が濁り過ぎている…うーん…これもちょっとなぁ。他のところと見比べてきます、とこちらの店も何も買わずに出て、最後の候補へ。

 

駅の近くのスーパーに入っている鮮魚店は三重の鳥羽港からの直送がウリだそうで、以前インターネットでホームページを見た事があった。今度こそ、と願いをこめて近づくと、あった…しかも真新しい。念のため鰓を見せてもらうと鮮やかな赤色をしている、…これだ。ようやく新鮮な鯖を見つけて、にやにやしながら一つ下さいと言って包んでもらいお会計、1匹400円。まぁ妥当かな。

 

家に帰るとすぐに包みを開けて鯖を取り出した。いつもの休日は家に帰るとまず洗濯物を取り込むのが常だけれど、今日はそっちのけ。尻の穴から包丁を入れて腹を裂き、そのまま口まで刃を入れる。お腹を広げて内蔵をずるりと取り出すと白子がついていた、これはラッキー。レバーと心臓と胃袋と一緒に味噌汁に入れるとしよう。鰓と血の塊を丁寧に取りのぞいたら三枚下しに。身を切り取って皮を下にしておくとピンク色の身がとても綺麗、しかもぼろぼろと崩れていない、新鮮な証拠だ。大量の塩を振って、2時間半程寝かせる。ジップロックにお酢と昆布を入れたら、鯖がしまるのを待つのにだらだらと読書をしたり、少し疲れたので自分も寝たりして過ごした。

 

ピピッとアラームを合図にして起き上がる。どれどれ、と鯖の様子を見ると、しっかりと水が出ている。うんうん、丁度よし、と頷きながら優しく水で洗い流す。しっかりと塩を落としたらキッチンペーパーで表面を拭いて、身に昆布があたるように鯖を酢に浸す。ジップロックの空気を抜いて、再び寝かせて20分。ぐんぐん鯖が美味しくなってく様子を想像していたらあっという間に時間が過ぎて、鯖の身も表面のたんぱく質が白く変わっていた。

 

満を持して取り出し、腹骨を削いでいく。白くなった身が削られ、再びピンク色が顔を覗かせる、これは美味しそう…。はやる気持ちを抑えて、ピンセットで小骨を抜いて、裏返して皮を剥ぐ。それからラップを巻いて、冷蔵庫で30分。わくわくしながらななめに包丁を入れて、身を削いでいく。鮮やかな、まだ赤い血合いが綺麗だ。半身の半分程切って皿に並べ、醤油とわさびを出して、さてさてようやくいただきます。

 

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美味しそうでしょう…美味しそうでしょう?…そう…これこれ。これだよー。冬の鯖は脂がのっていて、かといってくどくなく丁度いい。新鮮だから臭みもないし、しあわせだなぁ、うん、しあわせ。折角だからと日本酒も飲んですっかりいい気分になる。とてもいい週末だった。

 

 

 

鯖を買ったお店は首都圏と静岡に店舗を持つ山助さん。お近くにありましたら是非伺ってみて欲しい。本当に新鮮でいい鯖だった。

www.yamasuke.com