明後日の素

二日後がもっと暮らしやすいように

ワイルドカードの使い時

『昨夜のカレー、明日のパン』を読みまして。

 

www.amazon.co.jp

 

話の中で初めて出会った人に名刺を3枚渡して、『何かあったらここに連絡をしてこい』と告げるシーンがあるのですが、それを見て以前付き合っていた人から誕生日に『忙しくて生活がままならない時に言えばすぐに駆けつける券』を貰った事を思い出した。当時はお互い浮かれていて、受け取ったらすぐに大事にしまい込んだ。結局それは別れ話の為に呼び出そうと使おうとしたのだが、結局ゴミ箱に入れてその人とは関係を終えてしまった。

 

その出来事をぼんやり反芻し、切り札、というものはあるだけで心強くて、私は結局使わないなと思いながらはっとした。もし、自分の身に中程度の危機が迫った時にその券を使っていれば、二人の仲は深まっただろうし、もう一枚新しい券を貰えたかも知れないな、と。

 

頼ってくれて構わない、と相手が手を差し伸べたとき、その人は誰かから信頼される事に餓えているのかも知れない。そうせずに、迷惑が掛かってしまうからと手を取らないでいると、自分は信頼すべき人間に値しないのかもしれないと、不安や寂しさを与えてしまっていたのかもしれない。

 

出すべき時に出さなかったワイルドカードは、気がつけば死神が書かれたカードに変わっていて、縁を切る鎌を研いでいたのかもしれないと今になってから思う。勿論関係を終えた直接の原因ではないのだが、そういうものが積もりに積もっていったのだろう。今度そういうものを貰ったら積極的に使って行きたい。

 

渡辺ペコの作品はどれも面白いのでそちらも是非。

www.amazon.co.jp

 

『昨夜のカレー、明日のパン』原作

www.amazon.co.jp