明後日の素

二日後がもっと暮らしやすいように

溢れる言葉

ストーカー行為をしている女性と知り合った。ストーカーと言っても相手の家まで押し掛けただとか、郵便ポストの中を覗いたとかそういった事ではなくて、私の知り合いの女性に対して『吉田さん(仮名 男性)とどういう関係なんですか?お付き合いしているんですか?』などと面識もないのに突然尋ねたり、他にも幾つかそれに準ずる行為をしていたというもの。因みに知り合いと吉田さん(仮)はイベントで知り合い、その後インターネット上で一度だけ会話をしただけだったため、知り合いにとっては身に覚えのない話で、あまりにも唐突過ぎた為にすっかりその事を忘れていたらしい。

 

そんな行為を犯した彼女が、私と知り合いとのインターネット上の会話に、知り合いの事を探った痕跡を遺した。私はこういった事に対し勘が良い方なので、知り合いに対し件の女性と何かトラブルがないか尋ね、そういえば…と、以前あった上記の出来事を話してくれた。人間関係図としては、このようになる。

 

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何故彼女がそういった行動に至ったのか、そしてそれはどのような人がそうした行為を犯すのか、気になった為私は彼女に声をかけてみた。

 

『今度一緒にお出かけしませんか?』と。

 

唐突に、だ(挨拶もなしにこう尋ねた)。私は当時彼女と何の面識も、やり取りもなかった。大変に不自然な状況だ、しかしながら彼女は私が知り合いと繋がっていた為か、「是非。」と承諾を頂いた。

 

しかしながら、興味本位とは言え、相手は一人の人間だ。この状況はフェアではないので、彼女に対し『私は貴方の気質に気付いており、過去の行為については知り合いを通じて聞いている。そういう理由で貴方に興味を持ったのだ』と伝えた。

 

するとやはり、『では会えない。』と回答が。当然の事だ、過去の後ろめたい行為を知っている相手にわざわざ会いたい人などいないだろう。しかしながら彼女は“過去の事を知っている、全く関係のない他人”という極めて特殊な立場にある私に、過去の過ちに対する反省とともに今まで誰にも言えなかったであろう下記の心情を吐露してくれた。

 

「周りからどう思われようと、(ストーカー行為をしてしまう程)今ここまで堕ちた自分をそれをどうにか治す為に生活しているんです。今でも吉田さん(仮)を好きで彼が楽しく元気にいてくれる事をしっかり願えるようになりたいのです。愛が分からない人間なんですよ、私は。」

 

「(彼は)とても優しい人なんです。できればまた付き合いたいと思ってるようなクズなんですよ。だからもう私とは関わらないで。」

 

と。この発言に含まれる要素は色々とあると思うが、少なくとも彼を思う気持ちは、ひた向きであくまで一途なのだ。ストーカー行為が何故起こるかと云えば、興味の非対称性と、コミュニケーションを取れるかどうか、取れない場合その発露をどうするのか、という3つの大きな要素があると思う。それが不得手だったり、相手に拒絶されるアプローチをとってしまったりしたが為に、非難されるような行為に及んでしまうのだ。もし、一目惚れした時に上手く声をかける事が出来ていたなら、もし、別れ際に冷静に自分の感情を抑えて、ちゃんと引き下がっていたならば、次のコミュニケーションのチャンスはあったのかも知れない。そうすれば、募った想いは適宜発露され、本人の中でふくれあがる事はなかったのかも知れない。相手の家まで付けたり、交友関係を探ろうなんて気は起きなかったのかも知れない。最初はほんの些細なズレと、失敗でしかないのだ。ただ、適切なコミュニケーションを取れなかっただけで。彼ら彼女を擁護したい訳ではない、こうした非倫理的行為を犯すのは、決して異常者だけという訳ではなく、その多くが実は至って普通の人で、些細な事につまづいた人なのだと思う。

 

実際、このやり取りをした時には会う事は適わなかったが、その後冷静になった彼女と実際に会って話をする事が出来た。予想どおり至って普通の女性であった。私に気を許した為か、むしろ気さくでよく笑う人だった。趣味も合うので、今では良い友人である。